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半世紀前のMA-1を「着る」ために再生!プロの洗濯で蘇るフライトジャケット


【感動】半世紀前のMA-1を「着る」ために再生!プロの洗濯で蘇るヴィンテージフライトジャケット


私たちクリーニング師にとって、まさに**「見せてもらえるだけで幸運」**な、特別なご依頼品をご紹介します。それは、1950年代に製造された、MA-1フライトジャケットです。この一着を洗わせていただけるだなんて、正直、嬉しすぎて顔がにやけてしまいました。


プレッシャーと感謝


しかし、喜びと同時に、その責任の重さに大きなプレッシャーも感じました。この道33年になりますが、普段の仕事でここまでドキドキすることは稀です。それでも、こんな素晴らしいヴィンテージ品を私たちに託してくださったお客様には、本当に感謝しかありません。

当店では、お客様ご自身で簡単にできるクリーニング方法を紹介しているわけではありません。なぜなら、お預かりするお洋服は一点一点、その素材、シミや汚れの状態が異なります。私たちは、その服の特性に合わせた個別対応を徹底しており、それが「面倒」に思えるほどの手間と技術を要する作業だからです。しかし、お客様が「かんたんに綺麗にしたい」という気持ちを持つ中、私たちは「プロとして結果を出す」ことにこだわり続けています。


1950年代MA-1の類稀なる価値


今回お預かりしたMA-1は、まさに1950年代に製造された最初期モデルです。タグには「MIL-J-8279」と記載されており、これはアルファベットが付かない、あるいはごく初期のアルファベットが付く軍用規格番号を示しています。

このジャケットの主な特徴は以下の通りです。

  • 素材: 耐久性の高いヘビーナイロンツイル製のアウターシェルに、-10度にも耐えられるウールパイルの中綿が詰められています。

  • カラー: お馴染みのセージグリーン。

  • 裏地: 初期モデルの特徴である、オレンジではないグレーの裏地。

  • デザイン: 狭いコックピット内で干渉しないよう、襟はリブニット。着丈は短く、後ろ身頃が前身頃より短い設計。ゆったりとしたシルエットで運動性を確保しています。

  • ディテール: 酸素マスクのホースを固定するオキシジェンタブ、インターコムコードを固定するICSコードループ、そして角ばった形状のウィンドフラップなど、初期モデルならではの貴重なディテールが満載です。

  • 製造メーカー: 特に注目すべきは、**「SKYLINE CLOTHING CO.」**というタグ。これはMA-1の最初期モデルを製造していたことで知られるメーカーであり、このジャケットのコレクターズアイテムとしての価値を大きく高めています。

お客様がいくらで入手されたかは不明ですが、この「黒タグのSKYLINE」製MA-1は、市場では10万円を優に超え、20万~30万円で取引されることもあるほどの、極めて価値の高い一着です。


お客様の想いとプロの仕事


このMA-1は、すでにお客様が購入後にリブとファスナーを新品に交換されていました。これだけでも、こだわり抜いたリペアで5万円以上の費用がかかっていると推測できます。お客様がこのMA-1に相当な思い入れと投資をされていることが明らかでした。

私たちは、お客様にこのジャケットの類稀なる価値をお伝えし、同時に今回のメンテナンスが決して「単なるクリーニング」ではないことを説明しました。特に、交換前のファスナーとの金属反応による赤変や長年のシミ、中綿のへたりは、高度な技術と細心の注意を要する作業です。お客様は当店の過去の事例をご覧になっており、リスクと費用にご理解・ご納得いただいた上で、ご依頼くださいました。


再生の結果


作業の結果、残念ながらファスナーによる赤変や擦れ、傷穴の完全な改善には至りませんでした。しかし、頑固なシミ、長年の汚れ、染み付いたニオイは劇的に改善され、へたっていた中綿も大幅にふっくらと蘇らせることができました。

(動画のBefore & After映像はぜひご覧ください!)


まさに「着るためのメンテナンス」。お客様がこのMA-1を今後も気持ち良く着用するための「着る前洗い」としては、大成功と言えるでしょう。

このMA-1は単なる飾りのコレクターズアイテムではなく、「着たい」というお客様の強い想いが込められた一着です。これだけの費用と手間をかけてでも、着られる状態にしたいというお客様の情熱に、私たちも全力で応えることができました。

今日の事例は非常に稀なケースでしたが、私たちは日々、お客様が「着たい」と思ってお預けくださる全てのお洋服に対し、その想いに寄り添い、目的達成のために最善の努力を尽くすことをお約束します。

これからも、大切なお洋服を、一点一点、心を込めてメンテナンスしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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