【L.L.Bean】洗ったら大失敗…ビーントートが激しく黄ばむ罠。ボート・アンド・トートの丸洗いが危険な理由
- 武田信一

- 12 分前
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長年使い込むほどに愛着が湧き、アメカジや日常のコーディネートに欠かせない一生モノの定番品、L.L.Bean(エルエルビーン)の「ボート・アンド・トート(通称ビーントート)」。
新品にはない、くたっとしたキャンバスの風合いやハンドルのフェード感など、長年かけて育ててきたエイジングには、唯一無二の魅力がありますよね。
しかし、「汚れてきたから綺麗にしよう」と良かれと思ってお家で手洗いした結果、全体が真っ黄色に黄ばんでしまい、ショックを受けたり後悔したりしている方が後を絶ちません。今回は、愛着のあるビーントートをお家で洗うとなぜ失敗してしまうのか、その理由とバッグのお手入れとの付き合い方について解説します。
■ なぜ、良かれと思った手洗いで激しい黄ばみが発生するのか?
多くの方が「他の服から色移りしてしまった」「キャンバスから色が出た」と勘違いしやすいのですが、実はこのひどい黄ばみの原因は、色移りではないケースがほとんどです。
最大の原因は、洗った際に「洗剤成分が生地の奥に残留してしまったこと」にあります。
ビーントート特有のガシッとした24オンスの厚手キャンバス地は、想像以上に水分や洗剤成分を奥深くまで吸い込み、蓄え込んでしまいます。そのため、ご家庭の浴槽や洗濯機といったすすぎ環境では、生地の奥に入り込んだ洗剤を完全に流しきることが非常に難しいのです。
その流しきれなかった洗剤成分が、乾く過程、あるいはクローゼットで保管されている間に、空気中の酸素と触れ合ってじわじわと酸化していきます。これが、普通に洗い直しただけではビクともしない「重度の黄ばみ(酸化シミ)」の正体です。
時間が経てば経つほど、この黄ばみは生地に強く定着してしまいます。手洗いは一見、お品物に優しいケアのように思えますが、実はこういった「すすぎ不足によるトラブル」を引き起こすリスクが非常に高い、難易度のお手入れなのです。
■ 育ったアジや風格はそのままに、汚れの膜だけを取り除く
先日当店でお預かりしたビーントートも、ご自宅での手洗いで失敗し、その後数年間も使えずに眠っていたという重度の黄ばみが発生した個体でした。
オーナー様の「もう一度、この大切な相棒と一緒に気持ちよくお出かけしたい」という想いに応えるため、丁寧なリフレッシュを行いました。
仕上がりは、全体を覆っていた頑固な黄ばみがすっきりと抜け、本来のキャンバスの美しい風合いが復活。最も黄ばみが強かった持ち手の部分も、清潔感のある状態までしっかりと改善しました。
最も懸念される、黒い別布からの色落ちや、白い生地への色滲み(色泣き)も一切起こしていません。汚れの膜だけを取り除くことができたので、育ったビーントートならではの風格、長年かけて育ててきた良いアジはそのまま。生地の硬さもしっかりと残っているため、型崩れせず、ちゃんと自立する状態でお引き渡しができました。
■ 洗濯表示のない「鞄・バッグ」とのお手入れの付き合い方
今回、無事に綺麗になったビーントートをお渡しした際、オーナー様からとても大切なご質問をいただきました。 「今後のお手入れは、汚れたら水洗いがいいのか、洗剤を使った方がいいのか。日常的に洗濯機でケアすべきなのか、それともまたプロに頼むべきなのか」という内容です。
実は、私から「日常のお手入れはこうしてください」という具体的なおすすめの方法(正解)はありません。
今回のL.L.Beanだけでなく、世の中にあるほとんどの「鞄」には、洋服にあるような洗濯絵表示(ケアラベル)が付いていません。つまり、メーカー側も「家庭で丸洗いすること」を前提に作っていないのです。そのため、ご家庭で水洗いや洗剤を使って洗うということは、どのような方法であっても、すべて「自己責任」になってしまいます。
「汚れ」と一言で言っても、泥汚れ、油汚れ、飲み物のシミなど、原因によって正しい落とし方はすべて異なります。間違った洗剤選びや擦り洗いをしてしまうと、かえって生地を傷めたり、今回のような重度の黄ばみを招く原因になります。
薄手のエコバッグなら洗濯機で日常的に洗うのも有りですが、こういった本格的なビーントートは、本来であれば「頻繁に丸洗いするようなアイテムではない」というのが、私の一つの見解です。
■ どう育てるか、どう付き合うかはオーナー様の自由
ただ、洗う洗わないも含めて、大切な道具をどう育てるかはお客様の自由です。 「汚れたらまずは自分で洗ってみて、もしダメだったらプロに相談しよう」という付き合い方でも良いですし、「大切なものだから、最初から無理をせずプロに任せよう」という選択でも、どちらも間違いではありません。
もし今後、みなさんがお持ちの愛着あるバッグを「洗いたいな」と思ったときには、ただ闇雲に洗うのではなく、「なぜ洗いたいのか」「何の汚れが気になっているのか」を、ぜひ一度じっくり考えてみてください。
そして、ご自身で手を出すのが不安なときや、万が一失敗して困ってしまったときには、無理に触らずいつでもお気軽に私たちプロを頼っていただければと思います。その都度、あなたの大切な相棒をお救いできるかどうか、誠実にお答えいたします。
新品にはない、あなただけの歴史が刻まれた大切な道具。これからも長く、お気に入りのスタイルで楽しんでいただけますように。
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