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【他店拒否】40年前のアクアスキュータム・トレンチコート。酸化したカビ染みと全体の激しい黄ばみを特殊水洗いで劇的復元修復!


こんにちは、「シミ抜き武田クリーニング」店長です。

クローゼットの奥に、「着たいけれど着られない、でも思い出が詰まっていて絶対に捨てられない」という大切な洋服は眠っていませんか?

今回のブログでご紹介するのは、お客様が40年前に購入され、若い頃に3〜5年間、本当に大切に着ていたという「Aquascutum(アクアスキュータム)」の名作トレンチコートです。

「綺麗にクリーニングして仕舞ったはずなのに、長期間の収納中に茶色いシミが浮き出ていて、愕然とした……」という切実なご相談とともに、山形の当店の元へ届きました。


■ 届いたコートの第一印象と「40年目の真実」

箱を開けて最初に感じたのは、見た目の状態ではなく「ニオイ」でした。決して良いニオイではありません。湿気の多い場所特有の、強いカビ臭さです。

ここで皆さんに質問ですが、収納場所の環境って普段どれだけ意識していますでしょうか? 洋服って、実は「着ている時間」よりも「収納している時間」の方が圧倒的に長いです。

お客様がつけてくださった無数の仕付け糸やテープのマーキング箇所は、一見すると部分的なシミの段差に見えますが、実物を細部まで検品すると、これはもう全体のお色が完全に激しく黄ばんでいる状態でした。

この色ムラや裾の激しいシミの正体は「酸化黄変(おうへん)」です。 数十年前、収納前にクリーニングに出してあったとはいえ、当時の一般的なメンテナンス(ドライクリーニング)だけでは落としきれなかった目に見えない微量な汗や皮脂汚れ、そして収納中に付着したカビの胞子が、長期間の収納中に空気中の酸素と結びつき、繊維の奥の奥で黄ばみとして完全に固まってしまっていたのです。

当然、通常のドライクリーニングを何回繰り返しても、この状態は1ミリも改善しません。


■ 突きつけられるリスクと、水洗いNGを無視した「攻めの技術」

これらをリセットするには、洗濯絵表示を完全に無視した、極めて強力な「特殊水洗い」を、生地の状態を見極めながら何度も繰り返すという「攻めのメンテナンス」しか道はありません。

しかし、相手は40年前のデリケートなヴィンテージ。 綺麗にするにはそれ相応の強い不可(負担)がかかります。

  • 「裏地のチェック柄」が色落ちして表地に色移りしないか?

  • 目に見えない生地の劣化により、洗浄の負荷で傷穴が空いてしまわないか?

  • 襟裏の芯地の浮きがより顕著になってしまわないか?

  • ポケット内のラベルの文字が消えてしまわないか?

私はお客様に、起こりうるすべての現実とリスクを包み隠さずお伝えしました。 さらに、アクアスキュータム独自の撥水機能「アクア5」の再生についてもご質問をいただきましたが、40年という経年を考えればすでに撥水性は完全に消失しています。「もし武田の私物ならはっ水加工はしない。最大の防御は薬品のガードではなく、天気を気にして汚さないように着るという意識(心のスイッチ)だけで十分。だから私の過去の事例動画には古いコートにはっ水加工をした例がない」という本音もお伝えしました。

また、汚れを落とした後の「仕上がりの色ムラ」を心配されていたお客様に、「今の汚い黄ばみムラをリセットすることで、長年の自然な色褪せは『ヴィンテージ特有の美しい風合い』として生地に馴染み、見違えるようになります」とお話いたしました。

作業に入る前にお客様のモヤモヤを完全に吹っ切り、少しでも不安なことは何度でも聞いてほしい。そうして何度もメッセージのやり取りを繰り返し、お客様から「納得いたしました。最善と思われる道で進めてください」と信頼を託していただいてから、いよいよ一点入魂の作業が始まりました。


■ 職人の執念と、惚れ惚れする仕上がり

どれだけ多くの経験があっても、このようなハイリスクなヴィンテージ品には大きな重圧を感じます。

強力な多段階洗浄液からパーツを守るため、すべての本革くるみボタンとベルトのレザーバックルを手作業で取り外しました。「ベルトは綺麗なのに外すの?」と思われるかもしれませんが、このひと手間をかけることで、確実にボタンと本革バックルの質感を維持できるのです。

温度や洗剤の濃度、特殊調合した薬剤を絶妙にコントロールしながら、夜な夜なこの一着のためだけに時間を割き、何度も何度も工程を繰り返しました。

大変なお時間をいただきましたが、その結果がこちらです。

全体を覆い尽くしていた、あの頑固なカビや酸化黄変は、驚くほど綺麗に除去することができました! 最も懸念していた裏地のクラブチェック柄は、色落ちも移染も一切なく、非常に鮮やかな状態で耐え抜いてくれました。

独自のトリートメントとシルエット整形プレスによって、ヴィンテージ特有のクタクタとした「ヨレ」が改善され、名作ならではの「凛とした佇まい」が見事に復活しています。手触りも、古い酸化物がすべて抜け出たことで、ゴワつきが消えてサラサラと非常に気持ちの良い質感に生まれ変わりました。

両袖の先端には、事前の見立て通り、長年のスレで生地が痩せていたため経年劣化による小さな傷穴が露出しました。しかしこれは汚い汚れではなく、この服が歩んできた生きた歴史の証。もちろん、納品後にお直し専門店でいくらでも綺麗にリペア可能なレベルです。


■ 「職人魂」はお客様の元へ

数日後、無事にコートを受け取られたお客様から、本当に胸が熱くなるメッセージをいただきました。

「誠心誠意対応してくださった結果、本当に綺麗に蘇ったコートに感動致しました。まさしく『職人魂』です。心より御礼申し上げます」

一度は諦めかけた、若い頃の思い出。それがこうして再びお客様の元へ戻り、これほど喜んでいただけたこと。一瞬の油断も許されない戦いを続けた苦労が、この一言ですべて報われました。職人冥利に尽きます。

洋服は、単なる布ではありません。お客様の大切な記憶を包み込む、人生の相棒です。 40年ぶりのアクアスキュータム。これからは本来の輝きを纏って、また素敵な物語を刻んでいってください。

もし、あなたの大切なクローゼットにも、諦めきれない思い出の一着が眠っているのなら、いつでも公式LINEからお気軽にご相談ください。丁寧にお答えいたします。

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